転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


346 あっ! 忘れてた



 発酵のスキルのお話をしてたけど、それを教えてもらいに行くのは明日だよね?

 って事で、ここからは森で採ってきた薬草やベニオウの木を調べるお手伝いだ。

「本当に遊びに行っちゃっていいの?」

「うん! お姉ちゃんたちがいても、お手伝いできることないもん。だから遊びに行っていいよ」

 でも、鑑定解析は僕しか使えないでしょ?

 だからお父さんやお母さん、それにお兄ちゃんや姉ちゃんたちはここに居てもしょうがないんだよね。

 そう思った僕は、ほんとにいいのかなぁ? って顔してるキャリーナ姉ちゃんにそう言って、みんなで遊びに行ってもらったんだ。

「すまんのぉ、ルディーン君。せっかくのご家族との時間を」

「大丈夫だよ。だってお家に帰ったらずっと一緒だもん」

 そしたらロルフさんが、僕だけ遊びに行けなくてごめんなさいしてくれたんだよ。

 でもね、イーノックカウにはジャンプの魔法を使えばいつでも来られるもん。

 だからお姉ちゃんたちと違ってこの街で遊ぶのはいつでもできるし、家族と一緒にいるのなんて村だったら毎日そうだから、別にごめんなさいしてくれなくてもいいんだ。


「ほう、これは興味深いのぉ」

「ええ。でも、この結果は少し予想外ですわね」

 色々調べる事はあるけど、まずは採ってきた薬草を調べようって事になったんだ。

 だから僕、鑑定解析で採ってきた薬草の成分とかを調べるのかなぁ? って思ってたんだけど、そうじゃなかったんだよね。

 じゃあ何を調べたのかって言うと、錬金術ギルドにあった薬草とどう違うかなんだ。

 錬金術ギルドにはね、イーノックカウ近くの森の中に生えてるものだけでも、森の入口近くで採ったものからすっごく奥の方に行かないと採れないものまであるんだよね。

 そしてそれは同じ種類の薬草にも言える事で、生えてる場所ごとに分けて置いてあったんだよ。

 でね、僕が調べたのは、採ってきた薬草が森のどこら辺に生えてるのとおんなじなのかって事。

「ベニオウの木の実のなり方からして、多少は影響が出ているとは思っておったが……」

「どれもこれも森の中でもかなり奥、魔力溜まりにより近い場所に生えているものと成分の強さがかなり近いですわね」

 そしたら僕たちが行ったベニオウの木の近くに生えてたのはね、もっと奥の方に生えてる薬草とおんなじだったんだ。

 これにはロルフさんもバーリマンさんもびっくり、

 だってさ、そんなとこに生えてるのとおんなじって事は、あの木の近くは魔力が他んとこより濃いって事なんだもん。

「今までも場所によっては多少魔力濃度が違う場所がある事は解っておった。じゃが、ここまで違うとはのぉ」

「でも、これはかなり貴重な情報ですわよ。なにせ今までは森の奥深くまで行かなければ採れないと思われていた上級や特急のポーションの材料になる薬草が、もっと浅い場所で採取できる可能性が出てきたのですから」

 風の流れなのか、地形のせいなのか。

 ロルフさんとバーリマンさんは、イーノックカウの森の地図を見ながら、ああでもないこうでもないって話してるんだよね。

 でも今はこの場所が他より魔力が強い事が解ってるだけで、他の場所の事が解んないから予想しかできなんだ。

 だってこの場所の薬草しか、採ってきてないもん、

「どうせ森の奥まで行ったのじゃから、他の場所ももう少し見て周るべきだったかもしれぬのぉ」

「ええ。もう何か所かのサンプルがあれば、そこから何かしらのヒントが得られたかもしれませんものね」

 だからロルフさんたちは、せっかくあそこまで行ったんだからもっといろんなとこを見てくればよかったねって話してるんだよ。

 でもね、それを聞いて僕は、あれ? って思ったんだ。

「ねぇ、ロルフさん。ベニオウの木の近くだけが魔力が強くなってるの?」

「ん? ああ、それに関してはまず間違いなかろう。なにせ、あの場所の近くで採取された薬草と、今回採ってきた薬草とでは成分が違っておるからな」

「そっか。じゃあ、別のベニオウの木が生えてるとこも、やっぱり魔力が強いのかなぁ?」

 朝、みんなしてベニオウの実を採りに行った時、僕はあそこら辺で一番いっぱい実がなってる木を探してあそこに行ったんだ。

 でもあそこ以外でもいっぱい実がなってる木、他にもあったよね?

 てことはさ、もしかしてその木の近くも魔力が強かったのかなぁ?

 そう思って僕はロルフさんにそう言ったんだけど、

「何? それは一体どういう事じゃ?」

 そしたら、何の話? って。

 だから僕、あそこ以外にも実がいっぱいなってるベニオウの木が何本かあった所教えてあげたんだ。

「なんと!? ルディーン君。その木があった場所、この地図上で示す事は可能か?」

「この地図で? うん、多分できると思うよ」

 僕の探知魔法だけど、前は距離とか高さとかが解るだけだったのに今はちゃんと地図の形で場所が見えるようになったでしょ?

 ロルフさんが見せてくれた地図は僕の探知魔法の地図とほとんどおんなじだったから、なんとなくではあるけど覚えてた場所を指さして、こことここだよって教えてあげたんだ。

「ふむ、なるほど。という事はじゃ。やはり地形が関係しておるようじゃな」

「ええ。こうしてみると、魔力というものはただ漂ってくるのではなく、風などの影響を受けている事が解りますわ」

 僕にはよく解んなかったんだけど、ロルフさんたちが言うには、いっぱい実がなってるベニオウの木が生えてるとこはみんな、森の奥から風が流れ込むようなとこにあるんだって。

 それにさっき僕たちが行ったベニオウの木が生えてる場所だと近くに川まで流れてるから、そう言う地形だからってだけじゃなく、川の上を抜ける風も一緒になって森の奥から魔力を運んできてるんじゃないかな? ってロルフさんたちは言うんだ。

「そっか。じゃあやっぱり幻獣は、あそこで魔力を食べてたんだね」

「はて、幻獣が魔力を食べていたとは、何の事じゃ?」

「あのね、こないだ僕とお父さんたちが冒険者ギルドに頼まれてポイズンフロッグをやっつけに行ったんだよ。そしたらあの近くに幻獣ってのが居たんだ」

 僕がこんなとこにいるって事は幻獣もベニオウの実が好きなのかなぁ? って言ったら、お父さんは多分そうじゃなくって、魔力を食べてたんじゃないかな? って言ってたんだよね。

 でもあの時は周りの魔力がどれくらいあるかなんて解んなかったでしょ?

 だから多分そうじゃないかな? って思っただけだったけど、ロルフさんたちがちゃんと魔力がいっぱいあるって事を調べてくれたから、お父さんが言ってた事があってたんだって解ったんだ。

「それにね、次に幻獣を見つけたのはここなんだよ。ほら、この先見て」

「なるほど。幻獣が移動した先には、確かに別のベニオウの木が生えておるのぉ」

 その上、幻獣をやっつけた場所は、最初に見つけた場所とは別のベニオウの木が生えてる場所に向かい途中にあったんだよね。

 って事は、やっぱり幻獣はホントに魔力を食べてたって事だと、僕は思うんだ。

「でしょ。って事はお父さんの言ってたのがあってるって事だよね?」

「うむ。確かにその様じゃな」

 思ってる事を、ロルフさんもそうだねって言ってくれたもんだから、僕は大興奮。

 でも次の瞬間、とっても大事な事を思い出したんだ。

「あっ! ルルモアさんに教えてあげてないや」

 もしほんとにそうだったらみんな助かるからって、お父さんは帰ったら冒険者ギルドに教えてあげないとねって言ってたんだよ。

 なのに、持って帰ってきたベニオウの実がすっごく大きい事にみんながびっくりしたりしてたもんだから、そっちの事ばっかりになってすっかり忘れちゃってたんだ。

「お父さん、これを教えてあげたらみんな嬉しいって言ってたもん。早く教えに行ってあげないと!」

 だから僕、慌てて飛び出そうとしたんだけど、

「そんなに慌てなくても大丈夫よ。幻獣なんてめったに現れるわけではないのだから」

 バーリマンさんに、そんなに慌てなくってもいいよって言われちゃった。

 そう言えば、イーノックカウの魔力溜まりはおっきくないから、幻獣とか魔獣が出る事はあんまりないよって言ってたっけ。

「うむ。わしも孫から幻獣が現れたと言う話は聞いておったが、その時もこの街の近くでは初めて出たのではないかと言う話になったのう」

「お家でそんなお話をしたの?」

 僕、何でそんなお話をしたのかなぁって思って、頭をこてんって倒したんだ。

 だってさ、幻獣が居たのは森のずっと奥だし、すぐにやっつけちゃったでしょ?

 だから街の中で危ないよって話は出てないと思うんだよね。

 そう思ってロルフさんを見てたんだけど、そしたらちゃんとその理由を教えてくれたんだ。

「ん? えっとじゃな……わしが専属契約しておる冒険者がおるじゃろ? 彼らは森の奥深くまで分け入って薬草などを採ってくるからのぉ。それだけに、わしの孫も森の中でこのような異変があった時は毎回知らせてくれるのじゃよ」

「そっか! 知らないで森ん中入ってって、もし幻獣にあったら大変だもんね」

 僕の村でも、クラウンコッコがいっぱい出た時は村中の人に教えてたっけ。

 きっと幻獣のお話も、冒険者ギルドの人たちがみんなに教えてあげたんだろうね。

「ええ、そうですわね。ただ、お孫さんはこの街の近くの森に幻獣が出たと聞いて凄く驚いたでしょう。なにせ、初めての事ですから。だからロルフさんにそのお話を持って行ったのは、誰かに相談したいという側面もあったのかもしれないわね」

「ロルフさんに相談しに行ったの?」

「うっ、うむ。森に異変があればいろいろな素材が滞る事になるからのぉ。きっとそのことを心配したのではないかな?」

 ロルフさんはちょっと困った顔しながらそう言うと、バーリマンさんに、

「余計な事を言うでない」

 って、ちょっと怖い顔したんだよ。

 でね、怒られたバーリマンさんはと言うと、

「あら、ロルフさんがお孫さんに頼りにされているのは事実ではないですか」

 そう言いながら、ほほほって笑ったんだ。



 イーノックカウの森は、魔力溜まりがあると言ってもそれほど強くないのでこんな騒ぎが起こる事はあまりありません。

 だから幻獣が出たと聞いて、領主も不安になってロルフさんに相談しに行ったんですよね。

 そしてその時のことをつい口に出してしまったので、ルディーン君のちょっとした疑問とバーリマンさんのいたずら心でしどろもどろになってしまったと。


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